ファンド オブ ファンズ

 ファンド オブ ファンズという種類の投信がある。投信に投資する投信の事である。手数料の二重取りと言う批判もあり、日本では過去禁止されていた。投資対象となるファンドは信託報酬を取っているのに、ファンド オブ ファンズも信託報酬を取るのだから、手数料の二重取りと言う批判に関して、否定する人はいないだろう。投資対象ファンドの信託報酬が1.5%で、ファンド オブ ファンズの信託報酬が1.5%だと、合計3%の信託報酬が毎年差し引かれる事になるのである。

 しかしながら、このファンド オブ ファンズはメリットもある。特にヘッジファンドのようなリスクの高いファンドに投資する場合、一つのヘッジファンドに集中投資したときのリスクの大きさは、株式投資以上である。何せ、破綻(投資元本がゼロになる)するヘッジファンドだってあるのだから。すなわち、ヘッジファンドのようなリスクの高いファンドへの投資の場合、分散投資することで、リスクを小さく出来るのであるから、ファンド オブ ファンズという投資形態は、機関投資家にとっても、個人投資家にとっても、魅力的なスキームなのである。

 また、最低購入単位が大きいファンドの場合も、ファンド オブ ファンズの存在意義がある。大抵の場合、日本の投信は最低一口から投資することが出来る。基準価額が10,000円であれば、一口一万円であるから、この投資単位を更に小さくして欲しいと願う投資家はいないだろう。しかし、最低100万円以上でないと投資できないよという投信だって存在する。バブルの頃には最低500万円以上でないと投資できないファンドだって存在していた。基本的には機関投資家向けという事で投資単位を大きくしているわけだが、そのパフォーマンスが良いのなら、個人投資家だって購入したいと思うだろう。そんな時には、そういった投資信託を別の投資信託が購入し、小口化するという方法があるのだ。そんな時にも、ファンド オブ ファンズが便利だ。

 更に、投資対象となるファンドを入れ替えるというのであれば、ファンド オブ ファンドのメリットというのも理解しやすいかも知れない。いくら投資信託は株式投資に比べリスクが小さいと言っても、それなりのリスクはある。そのうえ、星の数ほどある投資信託の中から、ベストのファンドを選ぶ事など不可能に近い。そういったとき、ファンド オブ ファンズが、将来の株式市場を見据えた上で、高いパフォーマンスが期待できるファンドを、その時々に合わせて選択するというのであれば、ファイナンシャルプランナーに頼む変わりに、ファンド オブ ファンズに投資するという選択肢もあるだろう。

 しかし、本日発表された某投資信託が設定するファンド オブ ファンズに関してはあきれ返った。投資対象となるファンドは5つ。いずれも個人投資家向けに多くの証券会社で販売されている投資信託である。つまり、機関投資向けのファンドを小口化すると言う意義は無い。次に、その5つのファンドを見てみると、いずれも『成長株』『小型株』といった銘柄に特化しているファンドである。つまり5つのファンドに分散したからと言って、リスクが分散できるわけではない。更に、この5つの投資対象となるファンドは、固定されている。将来バリュー株に投資するファンドの方が好パフォーマンスが期待できるだろうと思われるような状況になったとしても、この5つのファンドを相変わらず投資しつづけるのである。

 はっきり言ってこのファンド オブ ファンズを購入するのなら、投資対象となっている5つのファンドを、個人投資家が直接購入した方が、信託報酬を節約できる分だけましである。あえて、このファンドに投資するメリットを探すとなれば、5つの超メジャーなファンドを、一つの証券会社で購入できるという事ぐらいであろうか。5つのファンドの基準価額を管理するよりは、ファンド オブ ファンズの基準価額を一つだけ管理した方が、売買報告書だって少なくて済む。また、このファンドを販売する証券会社が、投資対象となる5つのファンドを扱っていない場合で、その証券会社以外の証券会社を利用したくないという、意固地な投資家が居るとするならば、このファンドの存在意義も多少はあるのかもしれない。

 それ以外のメリットを探すとなれば、それは投資家にとってのメリットではなく、販売会社にとってのメリット、そして運用会社にとってのメリットという事になるだろう。投資対象となるファンドを運用する会社にとっては、数十億円を一般個人投資家に売るよりは、このファンド オブ ファンズの運用担当者に説明してファンドを販売した方が、楽だし、メリットも大きい。ファンド オブ ファンズの運用会社にとっては、超メジャーな5つのファンド運用状況を誰よりも早く把握できると言うメリットがあるかもしれない。その運用会社の運用ノウハウを手に入れようと考えているのかもしれない。

 いずれにしろ、個人投資家にとってのメリットは殆ど無いと考えて良い。

 基本的に私は今まで、個別のファンドに関するコメントは差し控えていた。投資家にとっては、どのファンドを購入すれば良いのかというのが一番の関心事である事は分かっているものの、私のこのWEBサイトでの役割は、そういった個別ファンドに関する売買の推奨ではなく、投資信託そのものの理解を進めてもらうことにあると考えていたからだ。しかし、今回に関しては、あえてその禁を破る事にした。何故ならば、これは一運用会社への批判ではなく、今後の投信業界全体に関わる事だからだ。最初に書いたように、ファンド オブ ファンズはもともと批判の多いスキームだったのである。しかしながら、いくつかのメリットもある事から日本でも認められるようになったのである。つまり、そのメリットを生かしてこそ、規制当局だって、規制を緩和しただけの価値があったと思えるわけだし、投資家に新たな投資機会を提供できるのである。しかしながら、日本での第1号が、このようなファンドだと、そのファンドだけの問題ではなく、ファンド オブ ファンズ全体に対する偏見を増長させてしまう可能性すらあるのではないかと思うのだ。関係者には、再考を願いたいと思う次第である。



back to my homepage


WebMaster:Kimihiko Uchida bobubeck@can.bekkoame.ne.jp
or otherwise qzg00456@nifty.ne.jp
©copyright 2000 Kimihiko Uchida