教会づくし

 今日はマンハッタンの北側を探索することに。地下鉄Aラインに乗って190丁目駅まで。ここにクロイスターズというメトロポリタン美術館の分館があるのだ。駅を降りると「クロイスターズはこちら→」との標識。矢印に沿って歩いていくとフォートトライオン公園に辿り着いた。公園の中をてくてく歩いていると、眼下にハドソン川が。

 こういう景色を見ていると心が洗われる。今日は日差しが強いものの湿度が低いのでそれほど暑く感じない。そよ風が吹いて本当に気持ちがよいのだ。ぼーっとハドソン川の流れを眺めていると時間が経つのを忘れてしまう。

 しかし目的のクロイスターズはどこにも見当たらない。近くで日向ぼっこをしていたおばさんに「クロイスターズはどこにあるの?」と聞いたところ、「ここから右に曲がって道路沿いに、歩いて、歩いて、歩いて。10分ぐらい歩いたら、でかい建物が見えてくるわよ。」とのこと。げげ、まだ歩くのか。そう思ったが仕方なく歩いてクロイスターズに向かう。10分以上歩いただろうか。ようやくでかい建物が見えてきた。しかし入り口がない。ぐるりと建物の周りを回ってようやく入り口を見つけたときにはぐったり。

 しかし気を取り直して、美術鑑賞。10ドル支払って中に入る。美術館と言っても、ここクロイスターズは西洋画とかが展示しているわけではない。フランスにあった僧院回廊を復元しているのだ。ボルドーにあった礼拝堂を復元した部屋や、マドリッドにあった礼拝堂を復元した部屋など、部屋そのものが一つの芸術なのである。

 庭も仕切がもうけられ、それぞれ、フランスの修道院の回廊を復元している。

 思ったよりも小さな美術館だったがそれでも、全てを見るのに1時間以上はかかった。美術館を出たときには腹はぺこぺこ、足は棒のよう。しかし、地下鉄の駅までまた歩かなければならないのかぁと思うと憂鬱になる。しかし美術館の出口にはなんとバスの停留所が。助かった。その停留所で一服しようと思った瞬間にバスがやってきた。「このバスはどこまで行くのか?」と聞くと「どこまで行きたいんだ?」と聞き返された。「125丁目まで。」と答えると、「大丈夫。乗んな。」とのこと。一服できなかったのは残念だが、また十数分間待つよりはまし。バスに乗り込んだ。

 125丁目で降りようと思ったが、先に聖ジョンディバイン大聖堂を見学することに。110丁目でバスを降りる。近くのレストランで昼食。ハンバーガーを頼んだら「どういう風に調理しますか。」と聞かれ、慌ててしまった。ステーキなら即座に「ミディアム」と答えるのだが、ハンバーガーでそんなことを聞かれるなんて予測してないからだ。思わず「ソーリー?」と聞き返すと、ウェイトレスはゆっくりと「調理法は、如何、いたしますか?」と繰り返した。そうか、ここはハンバーガーも客の好みに応じてくれるのだと理解して「ミディアム」と答えた。

 オレンジジュースでのどの渇きを癒し、ハンバーガーを食べたら多少元気になった。レストランを出て、聖ジョンディバイン大聖堂へ。とにかくでかい。建物の前に来ただけで圧倒される。これで、まだ建築途中だというのだからびっくり。完成まで後50年。私は生きているのだろうか。

 外観も見事だが、中も凄い。広い上に、ステンドグラスが見事。このステンドグラスを見ているだけでも楽しい。

 しかし、ステンドグラスよりも更に感動したのがこの十字架。

 日本人はこういう教会にも観光感覚で来るものだが、同じ観光で来ていても白人や黒人の場合は何か違う。カメラをぶら下げて、端から見るといかにも観光客なのだが、祭壇の前に来ると自然と手を組み頭を下げて祈りを捧げている。入れ墨を入れ頭を刈り上げ、信仰には無縁に思えるような若い黒人も、祭壇の前では神妙な顔つきになる。そして、祭壇の横にある説明書きを熱心に読んでいるのだ。

 聖ジョンディバイン大聖堂を出てコロンビア大学へ歩いて向かう。なんと広い大学だろう。そして中央には白いゴシック風の建物。その前のテニスコートで学生がテニスをしている。思わず自分の大学時代を思いだしてしまった。

 そのコロンビア大学の中にセントポール礼拝堂がある。これも見事。ステンドグラスも見事だが、パイプオルガンが凄い。右と左に所狭しとパイプが並んでいる。こんなところで聞くパイプオルガンを聞けたら凄いなぁと思っていたら、突然パイプオルガンが鳴り出した。どうも、何かのセレモニーがあるらしい。

 しばし、パイプオルガンの音色を楽しむ。いや〜本当にいい音です。この音を聞けただけでも、今日ここまで歩いてきた甲斐があったというものです。録音機材を持ってこなかったのが残念。持ってきていたら、ホームページにパイプオルガンの音色もアップできたのに。。。

 セントポール礼拝堂を出ると目前にリバーサイド教会が見える。リバーサイド教会はすぐそこだと、勇んで歩き出したが行き止まり。コロンビア大学から出られないのである。結局引き返して遠回りをする羽目になった。

 リバーサイド教会も見事。しかし、今まで見た教会とは何か雰囲気が違う。何故だろうと思ったが、掲げてある美術品が、普通の教会と違うのだ。ユダヤ迫害をイメージした彫刻や日本の神棚など、なんでもありって感じ。地下ではバザーもやっているし、横に併設された劇場ではインド音楽のパフォーマンスもやっている。そしてラジオ放送局まであるのだ。

 その後、グラント将軍の墓を見物。もうここは122丁目。125丁目まで歩いていったらハーレムだ。とぼとぼとリバーサイド公園沿いを歩いて行く。公園ではピクニックの家族連れや団体がバーベキューをして楽しんでいる。それを横目で見ながら、目指すは125丁目。しかしここで力つきた。125丁目のコットンクラブで夕食をと思ったが、夕食まで時間はまだあるし、地下鉄の駅が目の間。コットンクラブの看板だけ眺めて、すぐさま地下鉄に乗り込み帰宅。アパートに辿り着いたと同時にベッドに倒れ込んだのである。いや〜疲れた。



back to my homepage


WebMaster:Kimihiko Uchida bobubeck@can.bekkoame.ne.jp
or otherwise qzg00456@nifty.ne.jp
©copyright 2000 Kimihiko Uchida