独立記念日

 テレビをつけると、朝からハドソン川の様子が中継されている。海軍のパレードを放映しているのだ。そう。今日はアメリカの独立記念日。しかし、窓から外を眺めてみるといつもと同じような風景。国旗が飾られているわけでもなければ、大勢の人が盛り上がっているわけでもない。国旗が描かれたTシャツを着ている人がいるくらい。独立記念日は、国中で盛り上がるんだろうなぁと思っていただけに、ちょっと期待はずれ。インターネットで検索してみると、夜は花火大会が計画されているとのこと。また昼間はセントラルパークで無料のロックコンサートがあるらしい。今日の計画はこれで決まり。まずはセントラルパークへ向かうことにした。

 72丁目の駅を降り、西口からセントラルパークに入る。72丁目からセントラルパークにはいると、そこがストロベリーフィールド。イマジンの碑があるのだ。碑の前で合掌。

 その後サマーステージへ。野外劇場の裏側に、夏の間だけ特設ステージが設置されているのだ。コンサートが始まる1時間以上も前についたのだが、そこには既に熱心なファンが、たむろしていた。

 30分前に開門。「走らないで、歩いて席についてください。」とのアナウンスも空しく、開門と同時にみんな走り出す。結構前の方に並んでいたはずだったのだが、席に着いたときには思ったよりも後ろの方になってしまった。しかしど真ん中の席を確保。コンサートが始まるまで、持参した本を読んで過ごす。本の題名は『The Music Business』。

 3時にコンサートがスタート。最初に運営者側から挨拶。そしてステージが始まった。最初は女性が一人で生ギターを抱えて登場。この手の音楽は、ボトムラインで聞き飽きている。

 デジタルカメラで撮影していたら、隣の女性が「それなーに?デジタルカメラ?」と声をかけてきた。「そうだよ。撮した画像は、ここで見れるんだ。それに、ここにカードが入っているから、これをパソコンに入れるだけで画像を取り込めるんだよ。」と、しばしデジタルカメラの自慢。その女性は「おーグレイト!」を連発。すっかり意気投合してしまった。

 会社でも、自分のノートブックパソコンを使っていると、「それなーに。随分薄いコンピューターね。」といって話しかけてくる。私にとって、外人と仲良くなるのにハイテク機器が効果的なようだ。アメリカに、デジタルカメラや薄手のノートブックパソコンが販売されていないわけではないが、やはり一般的には珍しいようだ。

 「アメリカでは今でもフォークが人気なのかい?」と、その女性に聞くと、「確立されたジャンルだから、それなりにファンは根強いわよ。でも、私はこの歌手のことは知らないわ。」とのこと。あまり有名な歌手ではないようだ。

 40分ほどで、ステージは終了。そして4時からは、simiというパンクバンドが登場。パンクに分類して良いのかどうか分からないが、ハードロックでもヘビメタでもないしロックンロールでもない。やっぱりパンクなんだろう。ボーカルの女性が、バイオリンやギターを弾きながら、吠えまくる。この頃から、ステージの回りに客が集まりだしてきた。せっかく前の方に座ったのに全く意味がない。みんな、ステージ前で立ってみているのだから。

 simiのステージも40分ほどで終了。5時からは、ジョーン・ジェットのコンサートが始まる。ここに来た人のほとんどは、これが目当て。当然私も、ジョーン・ジェットが目当てである。私が中学生の時、ランナウェイズ(ラッツ&スターじゃないよ〜)という女性ロックバンドの「チェリー・ボンブ」という歌が大ヒットしていた。このバンドのギタリストがジョーン・ジェット。その後はソロで活動しているが、何曲かヒットも飛ばしているはずである。

 ジョーン・ジェットが登場したときには、客席は総立ち。どこからが客席で、どこからが通路なのか全く分からない状態である。そして登場したジョーンジェットは丸坊主。

 とにかく凄い迫力である。前の二つのステージとは格段に違う。別にテクニックが優れているわけではないのだが、ビンビンと伝わってくるものが、全然違うのである。そして二曲目にはあの懐かしの「チェリー・ボンブ」も披露。思わず、私も叫んでしまいました。

 その後も、休み無く演奏し続けるジョーン・ジェット。思ったよりもヒット曲があるものです。演奏した曲のほとんどは、どこかで聞いたことがあるような曲でしたから。

 観客も大いに盛り上がり。中にはこんな可愛いファンも。

 ステージが終了したのは6時半。ジョーン・ジェットのステージの間はずっと立ちっぱなし、踊りっぱなしだったので、足が棒のようになっている。重い足を引きずりながら地下鉄の駅へ向かう。来るときは短く感じた会場から地下鉄の駅までの距離が、帰りにはずいぶんと長く感じる。

 地下鉄に乗り込んでタイムズスクウェア駅へ。ここから、ハドソン川の川岸に向かう。ハドソン川から打ち上げられる花火は、多分、42丁目の83桟橋辺りが見やすいだろうと見当をつけたのだ。ここにはサークルラインの乗り場があり、何度か来ているので、夜中になっても土地勘があるだけ安心だというのもあった。

 しかし、83桟橋に来て驚いた。そこは黒山の人だかり。高速道路(といっても日本のように他の道路と分断されているわけではないので、日本の湾岸道路に近い感じ)が通行止めになっていて、そこが花火の観覧席になっているのだ。

 花火は9時スタートとのことだったが。9時を過ぎてもなかなか始まらない。今か今かと待っていたら、9時半を過ぎてようやくスタート。誰も怒り出さないのが不思議である。

 多分、花火の規模は日本の方が大きいのだろうと思う。しかし、見晴らしがよい。遮るビルは一つもないのだから。その上に、ハドソン川の二カ所から打ち上げられる花火を同時に楽しむことが出来る。二カ所から絶え間なく打ち上げられる花火は、大迫力。思わず「た〜ま〜や〜」と叫びそうになる。しかし、ここはNY。みんな静かに鑑賞している。

 面白いなと思ったのは、日本とこちらの花火に対する反応の違い。日本だと、綺麗な花火、凝った花火に拍手が集まるが、こちらではとにかくでかい花火に拍手が起きる。今にもこちらに降りかかってきそうな大きな花火だと、観覧席は大いに盛り上がり拍手も起きるのだが、しだれ柳やちかちかと光り続ける綺麗な花火には、それほどの歓声は起きない。それ以外に盛り上がったのは、ニコちゃんマークの花火くらい。

 独立記念日に毎年開かれる花火大会も鑑賞し、先週はゲイパレードも鑑賞。これで私もいっぱしのニューヨーカーを自称できるのではないかと思っているのですが。。。



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