SWING

 7時過ぎに、ブロードウェイの劇場街に行くと、どこの劇場も長蛇の列。どのミュージカルを見ようかと劇場街をうろつく。B.B.KINGと看板に書かれた劇場で足が止まったが、客の列が長くてどこがBOX OFFICEだか分からない。そこで、このミュージカルは次回のお楽しみ。SWINGと看板に書かれた劇場に入った。看板は、カラフルすぎて今ひとつチープな感が否めない。看板からは興味を引かれなかったが、題名から察するに、ジャズが中心なんだろ、「はずれはないな」と、気軽な気持ちで選んだのだ。

 「80ドルの席はあるか?」と聞くとちょうど、中央近辺の席が空いているとの返事。「それなら好都合。」と、チケットを購入して、劇場の中に入った。今までに見たミュージカルとの一番の違いは、日本人が少ないこと。日本ではマイナーなミュージカルなのだろうか。今までミュージカルには全く興味がなかったので、日本でどのようなミュージカルが評判になっていたのか、実は全く知らないのだ。

 日本人が少ないことの他に、白人の老夫婦が多いことも目に付いた。今までのミュージカルでは、子供を連れた夫婦や、若いカップルが多かったんですけどね。

 劇場内も、普通の劇場と言った感じで、けばけばしい内装ではない。ただ、緞帳だけはジャズをモチーフにしたシンプルな絵が描かれている。

 8時を10分ほど過ぎて、ミュージカルはスタート。最初はスーツを着た黒人が一人でステージに現れ、ウクレレを弾きながら歌を歌い出した。こんな調子でミュージカルが続くとなるとちょっと退屈だなぁと不安に思ったのだが。。。。その歌が終わった途端に、後ろからビッグバンドが登場。ご機嫌な音楽がスタートした。

 演奏される音楽は、カウント・ベイシーやデューク・エリントンの曲など、どれも、みんなが知っているような有名なジャズばかり。そして、その演奏をバッグに次々と、華麗なダンスが披露されるのだ。小難しいストーリーは一切無い。何せ、フレーズのない台詞は一つもないのだ。カップルが愛を語り合うシーンも、スキャットという手法を使ってコミカルに歌われる。

 演奏も、舞台の後ろに控えたビッグバンドによるもの。そのビッグバンドが単なるバックミュージカルではなく、ミュージカルの配役にもなっているのだ。ベーシストは突然前に出てきてベースを弾きながら女性と絡み、トロンボーンはミュート奏法で女性をくどく。その掛け合いが、妙にコミカルなのだ。アメリカのエンターテイメントの凄いところは、音楽と演技の一体であると言うことを強く感じる。アニメなどでも、音楽に妙にマッチした仕草で笑いを誘うことがよくある。日本のアニメはこちらでも評判だし、レベルは高いと思うのだが、この「音楽とのマッチング」という点においては、こちらの方が数段、上という気がする。

 踊りだって、凄い。飛んだりはねたりはさることながら、ゴムの空中ブランコを使って、空中ダンスを披露するなど、まるでサーカスのようだ。

 そして、主人公の一人である女性などは、トロンボーンとの掛け合いの際には、トロンボーンと同じような声で歌い、また後半ではピアノを弾きながらブルースを熱唱。さすがとしか言いようがない。歌も歌いピアノも弾き、踊りも踊るのだから。

 とにかく楽しいショー。アメリカのエンターテイメントを満喫できるショーだと思う。そして、何より、「これこそがミュージカル」といった印象を強く受けた。ストーリーや舞台装置ではなく、歌と踊りが中心。歌と踊り+演奏で、客を楽しませる。是非、日本でも上演されると良いなと思いますね。



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