オペラ座の怪人

 8時ぎりぎりにブロードウェイに到着。予約をしていなかったので、何軒か劇場をまわってチケットの取れるミュージカルを見ようと考え、まずはオペラ座の怪人を公演している劇場へ。駄目もとで「今日のチケットはまだあるか?80ドルのチケット。」と聞いたところ「大丈夫だ。」との返事。チケットを購入して、早速、劇場内へ。開演ぎりぎりに購入したというのに、結構良い席だ。ちょっと席は後ろだが、真ん中近く。ステージは全て見渡せる。

 そんなに良い席が、開演前ぎりぎりに取れるというのに、会場は超満員。どういう仕組みになっているのだろう。

 ただ、客層は今までのミュージカルとはちょっと違う。人気のあるミュージカルなのだろう。ガキが多い。ガキと言っても本当に幼稚園児かそれ以下。親が連れてきているのである。それと観光客らしき日本人や東洋系ののグループ。それ以外の人たちも、観光客らしい。何せ、フラッシュがバチバチ光っている。このフラッシュ。開演前の「カメラやビデオの撮影は禁止されています。」との場内アナウンスにも関わらず、開演後も止むことはなかった。マナーの悪い連中だ。

 開演前に買ったパンフレットを見ると、いくつかの言語でストーリーが説明されている。日本語でも、当然書かれていた。後になって分かったが、このミュージカル、ストーリーが随分複雑なのである。劇中劇のシーンが多く、ぼーっと見ていると何がなんだか分からなくなる。ストーリーの解説が必要なのだろう。

 ただ、ストーリーが分からなくても、随分楽しめるミュージカルではある。まず、舞台装置や衣装が豪華。舞台の回りは金色の像で飾られているし、役者の来ている服はどれも金銀のラメ入りで光り輝いている。仮面舞踏会のシーンなどは、舞台上に幅の広い階段が用意され、そこでたくさんの人が、豪華の服を着て踊りに興じる。そのシーンを見ただけでも、「豪華だなぁ。」とため息が出てしまう。よくよくみると、半分くらいは、お人形さんなんですけどね。

 ファントムが最初に現れるシーンは、鏡を使ったトリック。クリスティーヌの姿は、鏡に映っているのに、その鏡にファントムの姿も現れるのだ。実物は舞台上に見えないのに。そして、その鏡に映ったファントムがいつの間にか実物に入れ替わる。まるで手品を見ているようなショーである。

 トリックで客を喜ばしたかと思うと、幻想的なシーンも素晴らしい。城の下にある下水道の中を、ファントムとクリスティーヌが船でこいでいくシーンなどは、夢を見ているようだった。スモークの中を船が進んでいくと、それにつれて、回りの風景が微妙に変化して、場所を移動しているのが分かるのだ。そして、舞台の下から、川を照らすためのろうそくが静かに現れて、幻想的な雰囲気を盛り上げていく。

 迫力も凄い。シャンデリアが落ちてくる有名なシーンが、最初と中盤に二度あるのだが、二回目はなんと客席の中央めがけて落ちてくる。天井からは、金色の人形でかたどられたかごがつるされているのだが、そこからファントムが現れることも。

 舞台装置だけではなく、歌も凄かった。ほとんどの役者がオペラのような発声。歌うと言うよりも、声を一つの楽器と見立てて演奏しまくっているといった感じ。高い音をガンガン鳴らしたり、超低音で響き渡らせたり。数十秒間(もしかしたら数分間かもしれない)も、息継ぎ無しで低音で発声し続けた時には、それだけで拍手が起きた。

 これだけ凄いミュージカルなのに、隣に座ったガキはぐずるし、咳払いの音がしょっちゅう聞こえるし、フラッシュはガンガンたかれる。そのたびに興ざめしてしまうのが残念だ。


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