SWEET BASIL

 アパートのすぐ近くにあるのに、なかなか行く機会が無かったのです。何故かいうと、このお店の開店時間が午後8時。夕ご飯を食べようと思うときには、まだ開店していないのです。そして開演時間は午後9時。つまり8時半くらいにちょうど、このお店に来れるタイミングでないと、ご飯を食べて演奏を楽しむことができない。ところが今日は、夕ご飯を食べようと時計を見たらなんと午後8時。時間もちょうど良い。そして、今日の演奏者をインターネットでチェックすると、「キューバのトップミュージシャンとマッチした演奏が好評」と、なかなか面白そうだったので、「よし、今日はSWEET BASILだ!」と、決めたのです。

 「日本人スタッフも常駐」というガイドブックの言葉通り、お店にはいると、2〜3人の日本人が、働いていました。ただ、客は、ブルーのノートほど日本人の姿が見えませんでした。というよりも、客自体の数が少ない。やはり、ニューヨークではジャズは下火なんだなと改めて感じさせられました。その代わり、来ている客は熱心なジャズファン。一番前に座っていたおじいさんなんかは、演奏が始まった途端に上着を脱いで、手でリズムを取り出し始めましたからね。

 ただし「音響設備も抜群」というガイドブックの言葉は眉唾。プレイヤーが全員ステージに揃い、演奏を始めようとした時のこと。ボーカルの黒人男性がマイクに向かって、声を発しているのですが、音が全然スピーカーから出てこない。バネットも、客に向かって挨拶しようとマイクに向かって喋りかけるのですが、これも全く聞こえず。後ろの方で、スタッフの一人が、右往左往しているのですが、なかなか解決しない。電話をかけたり機材のスイッチをいじったりしているのですが、いつまでたっても、マイクが声を拾わないのです。プレイヤーも多少いらいらし始め、「キャンセルするわよ〜」と言っている。20分くらいして、そのスタッフがステージ前にある電源のスイッチをオンにしたところ、やっと問題は解決。客の間からは割れんばかりの拍手がおきました。

 プレイヤーはジェーン・バネット(Jane Nunnett)という女性のソプラノサックス奏者。メンバーは他に、パーカッション2名、ベース、ドラム、ピアノ、ボーカルという構成。バネットはソプラノサックス以外にもフルート(普通よりも大きめのフルートでした。バス・フルートとでも言うのかな?)を演奏。ただし、私はフルートのことはよく分からないので、「随分と息が漏れているなぁ」としか感じませんでしたけど。

 凄いのはドラムの少年。見た感じは15〜6歳という若さなのですが、滅茶苦茶上手い。いわゆる典型的なジャズドラムといった叩き方で、難しいリズムも鼻歌交じりで叩いていく。早弾きもお手の物。こういうのを見ると、才能のある人って本当にいるんだなと思います。

 ピアノもなかなか格好良い。サンバっぽいフレーズを早くしてオクターブで弾いていく彼のアドリブは、どの曲にも登場するのですが、それでも、なかなか聴き応えがありました。多分彼の得意フレーズなのでしょう。

 そして面白かったのはボーカルの黒人男性。歌だけではなく効果音も担当しているのです。効果音と言っても全て肉声。口をすぼめて手をあて、鳥の鳴き声の物まねや、パーカッションの音を真似るのです。今や、シンセサイザーでどんな効果音だって出せるのに、頑張ってるのなぁと思います。

 ふと気が付くと、既に第二回目のステージが始まる時間まで、あと30分。アンコールなしでショーは終わってしまいました。ちょっと物足りない感じもしましたが、始まる前にトラブルがあったのでしょうがないでしょう。


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